Intel Core Ultraの最新CPU 2シリーズと、2024年はじめに発売されたIntel Core Ultra 1シリーズについて両方を実機レビューできましたので、比較結果をまとめます。
現在、Intel Core Ultra 2シリーズの機種はまだ高く、Intel Core Ultra 1シリーズの機種と両方が販売されている状況ですが、どちらを買ったほうがよいかについてもまとめます。
以下の機種の実機レビュー結果をもとに、比較結果をまとめます。
HP OmniBook Ultra Flip 14-fh
OS | Windows 11 Home |
CPU | インテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 258V |
メモリ | 32GB |
ディスプレイ | 14.0インチ・2.8K・OLED タッチディスプレイ (2880×1800) |
SSD | 1TB SSD |
無線LAN | IEEE 802.11be (Wi-Fi 7) |
Bluetooth | Bluetooth(Ver5.4) |
Webカメラ | 9MP IR AI カメラ (約900万画素) |
指紋認証 | あり |
顔認証 | あり |
外形寸法 | 約 313 × 216 × 14.9 mm (最厚部) |
駆動時間 | 最大20時間 |
重量 | 1.34kg |
価格 | 19.98万円~ |
OS | Windows 11 Pro 64ビット |
CPU | インテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 155H |
メモリ | 32GB(デュアルチャネル) |
ディスプレイ(有機EL) | 14.0インチワイド・2.8Kブライトビュー・OLEDタッチディスプレイ(2880 × 1800) |
SSD | 1TB SSD(PCIe Gen4x4 NVMe M.2) |
アクティブペン | HP MPP アクティブペン(ブラック) |
無線LAN | IEEE 802.11ax (Wi-Fi 6E対応) |
Bluetooth | Bluetooth(Ver5.3) |
Webカメラ | HP Wide Vision 9MP IR カメラ (約900万画素) |
指紋認証 | あり |
顔認証 | あり |
外形寸法 | 約 313 × 220 × 16.9 mm |
駆動時間 | 最大13時間(66Wh) |
重量 | 1.44kg |
価格 | 19万円台~ |
Intel Core Ultra 7 155Hを搭載していたHP Spectreと、後継機種でIntel Cora Ultra 7 258Vを搭載しているHP OmniBook Ultra Flip 14-fhのベンチマーク結果をもとに解説します。
レノボ Yoga Slim 7i Aura Edition Gen9
OS | Windows 11 Home 64ビット |
CPU | インテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 258V |
メモリ | 32 GB LPDDR5X-8533MHz |
ディスプレイ | 15.3インチ 2.8K液晶 (2880 x 1800) IPS, 光沢あり, マルチタッチパネル, HDR400, 100%DCI-P3, 500 nit, 120Hz, ガラス |
SSD | 1 TB SSD M.2 2242 PCIe-NVMe Gen4 TLC |
無線LAN | Wi-Fi 7対応 (IEEE 802.11be/ax/ac/a/b/g/n準拠) 2×2 |
Bluetooth | Bluetooth® 5.4 |
Webカメラ | IR&1080p FHDカメラ (電子式プライバシーシャッター付) |
認証 | 顔認証 |
外形寸法(mm) | 約 343.8×235.4×13.9mm(最薄部) |
駆動時間 | 70Whr 動画再生時 約 13.7 時間・アイドル時 約 22.3 時間 |
重量 | 1.53kg |
価格 | 24.98万円 |
こちらの機種も、Intel Cora Ultra 2シリーズを搭載した最新機種のため比較に用います。
OS | Windows11 Home(64bit) |
CPU | インテル® Core™ Ultra 5 125H、Core™ Ultra 7 155H、Core™ Ultra 9 185H |
メモリ | 16GB~32GB LPDDR5X-7467MHz (オンボード) |
ストレージ | 512~1TB GB SSD, M.2 PCIe-NVMe Gen 4 TLC |
液晶(IPS) | 14インチ 2.8K液晶 (2880 x 1800) IPS, 光沢なし, マルチタッチ非対応, 100%sRGB, 400 nit, 120Hz, ブルーライト軽減パネル |
液晶(OLED) | 14インチ 2.8K OLED(有機ELディスプレイ) (2880 x 1800) 光沢あり, マルチタッチ非対応, HDR500, 100%DCI-P3, 400 nit, 120Hz |
重量 | 約 1.46kg |
サイズ | 約 312x221x15.99mm(最薄部) |
バッテリー | 84Whr 動画再生時 約 10.4 時間・アイドル時 約 24.9 時間 |
価格 | 12万円台~ |
こちらの機種は、Intel Cora Ultra 7 155Hの性能を十二分に引き出している機種だったので、こちらも比較対象にします。
Intel Cora Ultra 2シリーズと1シリーズの違い
私が実機レビューしたCPUは
Intel Core Ultra 7 155H
Intel Core Ultra 7 258V
の2つになります。
Intel Core Ultra 7 258Vのほうが新しい世代で、2シリーズと呼ばれているものです。
2シリーズのほうが単純に性能が上がっているかというとそうではありません。
Intel Core Ultra 2シリーズは、AI性能と省電力性能を向上させて、ピーク性能はむしろ1シリーズより落としているので、バッテリー持ちと実用領域での性能を重視したCPUです。
ベンチマークでのスコアは、むしろ1シリーズよりも落ちる傾向にありました。
まとめますと2シリーズの特徴は以下です。
- 2シリーズはAI性能が大幅向上している。ただ現状で使い道なし・・・
- 2シリーズは省電力性能が向上している。ただ1シリーズとそこまで大きな違いは感じない。
- 2シリーズはピーク性能は落ちるが実用域での性能は向上している。
- 2シリーズはグラフィック性能がわずかに向上している。
以下詳しく解説していきます。
AI性能の大幅向上。ただ現状使い道なし・・・
2
Intel Core Ultraシリーズでは、NPUという、AI処理に特化したプロセッサを搭載しています。
このNPUの性能はTOPSという指標で表されており、1TOPS=1兆回の演算処理が実行できる性能となります。
Intel Core Ultra 7 155H:11TOPS
Intel Core Ultra 7 258V:47TOPS
の性能があり、大幅に向上しています。
また40TOPS以上が、マイクロソフトが提唱するAI PC「Copilot+ PC」の要件になり、Intel Cora Ultra 2シリーズはこの性能を満たしています。
じゃあ我々ユーザーが、このAI性能を活かして何か劇的に便利になるかというと・・・
現状、ソフトウェアがまだ対応できていないので、何か目に見えて便利になるようなことはなく、成長途上といった感じです。
省電力性能が向上している。ただ1シリーズとそこまで大きな違いは感じない
Intel Core Ultra 2シリーズは省電力性能が向上しています。
実際にバッテリー持ちを以下の2台で比較しました。
レノボIdeaPad Pro 5i Gen9:Intel Cora Ultra 7 155H、バッテリー容量84Whr
レノボYoga Slim 7i Aura Edition:Intel Cora Ultra 7 258V、バッテリー容量70Whr
以下の条件にてバッテリー駆動時間のチェックを行いました。
- 輝度MAX
- youtube動画流しっぱなし
IdeaPad Pro 5i Gen9 | 9時間27分 |
---|---|
Yoga Slim 7i Aura Edition | 10時間10分 |
バッテリー持ちはどちらも素晴らしかったです。
特にYoga Slim 7i Aura Editionのほうは、10時間超えと素晴らしい結果でした。
同様の計測をIntel Core Ultra以前の機種で行うと、長くて7時間程度といったところだったので、いかに省電力性能が向上しているかが分かります。
ただ、Intel Core Ultra 1シリーズのころから、大幅向上したなというのは感じていたので、2シリーズになってさらに向上したか?というと正直、そこまでの違いは感じませんでした。
ピーク性能は落ちるが実用域性能は向上している
Intel Core Ultra 2シリーズは、ベンチマークでの最大スコアのようなピーク性能は落ちていますが、実用域での性能はむしろ向上しています。
以下は、CPUベンチマークでメジャーなPassMarkスコアの比較です。
CPU | マルチ | シングル |
Core i7-13700HX | 36225 | 3955 |
Core Ultra 7 155H(レノボIdeaPad Pro 5i) | 32740 | 3846 |
Core Ultra 7 155H(HP Spectre) | 27184 | 3546 |
Ryzen 7 8840HS(レノボ) | 27215 | 3796 |
Ryzen 7 6800H | 25955 | 3458 |
Core Ultra 7 258V(レノボYoga) | 22241 | 4396 |
Core Ultra 7 258V(HP OmniBook) | 20384 | 4390 |
Core Ultra 7 155H(HP Spectre) | 24100 | 3845 |
Core Ultra 5 125H | 24554 | 3636 |
Ryzen 7 8840HS(HP) | 23729 | 3926 |
Ryzen 7 8840U | 23428 | 3822 |
Ryzen 5 8640U | 22006 | 3585 |
Core i5-1340P | 21578 | 3742 |
Core Ultra 7 155U | 19232 | 3678 |
Core Ultra 5 125U | 19263 | 3499 |
Core i7-1260P | 21696 | 3540 |
Ryzen 7 6800U | 21461 | 3459 |
Ryzen 7 7735U | 21278 | 3419 |
Ryzen 7 7730U | 21446 | 3258 |
Ryzen 7 5800U | 18644 | 3108 |
Core i5-1335U | 17694 | 3684 |
Core i5-1235U | 16601 | 3465 |
Ryzen 5 5625U | 16933 | 3138 |
Core i7-1250U | 13518 | 3557 |
Core i7-1165G7 | 11005 | 3142 |
結果は上記で、マルチスレッドのスコアはIntel Core Ultra 7 155Hのほうが大きく上ですがシングルスレッドのスコアはIntel Core Ultra 7 258Vのほうが上です。
マルチスレッドのスコアは、動画書き出しなどの高負荷作業や、マルチタスクには効きますが、普通にアプリを使ったりする作業はシングルスレッドのスコアのほうが快適性には効くと感じているので、Intel Core Ultra 2シリーズは実用域での性能を重視したCPUと言えます。
また、アプリの実際の動作性能を見るため、PCMARK10での測定結果を比較します。
PCMARK10は、実際のアプリケーションを使用したベンチマークソフトで、実際にパソコンを使った時の作業快適性を計測するのに適しているといわれているベンチマークです。
測定結果は以下の通りです。
HP OmniBook Ultra Flip 14-fh:Intel Core Ultra 7 258V
HP Spectre:Intel Core Ultra 7 155H
計測内容 | HP OmniBook | HP Spectre |
トータル | 6838 | 6331 |
App Start-up Score(アプリ起動) | 10781 | 11719 |
Video Conferencing Score(Web会議) | 8692 | 7259 |
Web Browsing Score(Web閲覧) | 9876 | 9630 |
Spreadsheets Score(表計算) | 11406 | 9444 |
Writing Score(文書作成) | 7582 | 7123 |
Photo Editing Score(画像編集) | 16851 | 13357 |
Rendering and Visualization Score(レンダリング) | 8180 | 8901 |
Video Editing Score(動画編集) | 6375 | 6082 |
HP SpectreのIntel Core Ultra 7 155Hと比較すると、多くの項目で、Intel Core Ultra 7 258Vのほうがスコアが高くなっており、実アプリでの動作性能は上がっているということが分かります。
グラフィック性能はわずかに向上している
Intel Core Ultra 2シリーズは、ピーク性能は1シリーズに及ばないものの、グラフィック性能はわずかですが向上しています。
ベンチマークの3DMark Fire Strikeのスコアを比較します。
めやすとしてはGeForce GTX 1060がエントリー向けグラフィックボードとなります。
グラフィックボード | 3DMark Fire Strike |
GeForce RTX 3080 Ti | 38323 |
GeForce RTX 3080 | 36176 |
GeForce RTX 4070(Laptop) | 27898 |
GeForce RTX 4060 | 27500 |
GeForce RTX 3060 | 20764 |
GeForce RTX 4050 Laptop | 18579 |
GeForce RTX 3050 Ti | 14911 |
GeForce GTX 1060 | 12500 |
Intel Core Ultra 7 155H(CPU内蔵)IdeaPad Pro 5i | 9747 |
Intel Core Ultra 7 258V(CPU内蔵)HP OmniBook | 9702 |
Intel Core Ultra 7 258V(CPU内蔵)レノボYoga | 9512 |
GeForce GTX 1650 | 9000 |
AMD Ryzen 7 8840HS(CPU内蔵) | 8503 |
Intel Core Ultra 5 125H(CPU内蔵) | 8488 |
Intel Core Ultra 7 155H(CPU内蔵)HP Spectre | 7900 |
AMD Ryzen 7 8840U(CPU内蔵) | 7600 |
AMD Ryzen 7 8840HS(CPU内蔵)(HP) | 7495 |
AMD Ryzen 7 6800U(CPU内蔵) | 6666 |
AMD Ryzen 5 8640U(CPU内蔵) | 6376 |
Intel Core Ultra 7 155U(CPU内蔵) | 5399 |
Intel Core i5-13500H(CPU内蔵) | 5237 |
AMD Ryzen 5 7535U(CPU内蔵) | 5103 |
Intel Core i5-1340P(CPU内蔵) | 5000 |
Intel Core Ultra 5 125U(CPU内蔵) | 4955 |
Intel Core i7-1260P(CPU内蔵) | 4462 |
AMD Ryzen 7 7730U(CPU内蔵) | 4000 |
AMD Ryzen 5 5625U(CPU内蔵) | 3288 |
HP SpectreとHP OmniBook Ultra Flip 14-fhの比較では、HP Spectreの7900に対して、HP OmniBookは9702と向上しています。
ただ機種ごとの違いもあり、レノボIdeaPad Pro 5i Gen9は、Intel Core Ultra 7 155Hですが9747とスコアが高くなっています。
平均値をとると、Intel Core Ultra 7 258Vのほうが若干、性能が上がっています。
そのため中量級くらいまでの3DゲームやフルHDまでの動画編集も難なくできます。
Intel Core Ultra 2シリーズは省電力性能と実用域の性能を高めた総合力の高いCPU
Intel Core Ultra 2シリーズは、ベンチマークの最高スコアとしてはさほどのインパクトはないですが、実用域での性能向上と省電力性能が高く、グラフィック性能も高いのでクリエイティブワークにも向きます。
とても総合力の高いCPUです。
ただ、まだ価格がどれも高く、価格がこなれてくるにはもう少し時間がかかりそうです。
Intel Core Ultra 7 155Hや、Intel Core Ultra 5 125Hであれば、価格も少し落ち着いてはきており、性能も十分に高いので、価格差によっては1シリーズの選択も大いにアリだと言えます。
以下は、Intel Core Ultra 7 258Vを搭載したHP OmniBook Ultra Flip 14-fh、レノボYoga Slim 7i Aura Editionのレビュー記事になるので参考にしてみてください。
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